医療ビジネス

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がん対策基本法とがん対策推進基本計画

 先日、ご近所でいつもお声がけしてくれる年配のご主人がガンで亡くなられました。それまで普段通り、奥様の車で買い物に出かけておられたので、びっくりしましたが、ガンが総じて亡くなる直前まで普段通りの生活ができます。もちろん肺炎など他の疾患を併発している場合はこの限りではありませんが、疼痛コントロールがうまくできれば傍目から見て病気をされているとはわかりません。そして、ストンと亡くなられるケースが多いです。(ストンという表現は、在宅でお手伝いしていたC医師がよく言われていた表現です)

 で、今回の「がん対策基本法」の改正が大きく報じられましたが、その中で「患者雇用継続を企業に努力義務」としたことがあります。上記の例でもわかるように亡くなられる直前まで普段通りに過ごすことができるのですから、まだ仕事現役の人は大いに働きたいと思う人も多いでしょう。

 ここで復習ですが、がんに関する法律は、今回改正された「がん対策基本法」が基にあります。これは平成18年に策定された法律ですが、このがん対策を推進するための具体的な法律が「がん対策推進基本計画」です。基本計画は5年に一度見直すことになっており、来年度の通常国会にて「第3期がん対策推進計画」が策定される予定です。この年末年始に今回改定された「がん対策基本法」を元に練られることになるでしょう。

なお「がん対策推進基本計画」はこれまで以下の通り、改定されてきました。

第1期がん対策推進基本計画 平成19年6月策定
第2期がん対策推進基本計画 平成24年6月8日改定
第3期がん対策推進基本計画 平成29年度 改定予定


 なお、がんに関する法律に「がん登録等の推進に関する法律(がん登録推進法)」があります。

 

 下記の2図は厚生労働省の資料からの転載です。

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在宅看取りの満足度評価と医療介護介入の在り方に関する研究

 これは3年ほど前に、私、山崎博史が書いたResearch&Questionsです。しかしながら、あまりにも手間と症例数を必要とするために、最後まで研究が進まなかったものです。おそらく大きな大学病院が関係医療機関と共同で行わないとできない研究だと思います。どなたか参考にしていただいて研究をしていただけばと思いここに記しておきます。(落とし所はいかに普段のかかりつけ医が大事かという点です)

 

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在宅看取りの満足度評価と医療介護介入の在り方に関する研究

当院では、過去2年間の在宅療養患者の医療介入度の比較検討を、がんと非がんに分けて検討を行った。その結果、訪問看護ステーションの介入度に有意差が出た。(p<.001 , Mann–Whitney U test)この結果は、過日行われた第16回日本在宅療養医学会でポスター発表をする機会をいただき、多くの参加者に関心をいただいた。

 

この研究と平行して、訪問看護ステーションに質的なアンケートを実施した(VAS)。その中で、特に自ステーションの自己評価、当院の評価、及び、患者自身の病状受容について比較した結果、患者の病状受容評価が他水準より低いことが確認できた。そこで、検定をおこなった結果、水準間には有意な差が見られた。(p<.001 , Kruskal-Wallis) これらの結果から、量的担保は、訪問看護ステーションとの連携で保証されるが、質的担保が保証されていない事が示唆された。

 

そこで、過去にどのような患者の心理的な研究が行われたかを調査したところ、佃ら1)によるがん闘病記中の心理的変化や、京田ら2)による死生観の研究など、多く確認できた。ところで、山岸3)によると、『「信頼」は、相手が自分を搾取しようとする意図をもっていないという期待の中で、相手の人格や相手が自分に対してもつ感情についての評価にもとづく部分である』と指摘しているように、医療者が初対面の患者のidentityにまで踏み込む事を鑑みると、質的担保を保証することは在宅医療に関わる時の重要な「信頼」要件であり、いかに早い段階で患者と医療者の間で信頼を構築できるかが大きな要因になると考えた。また、鈴木4)は安定した治療関係を築いていくためには治療の認識的枠組みが安全かつ堅固に設えられていることが重要であると述べている。

 

 そこで、我々は「在宅医療を始めるきっかけ」がその後の予後に大きく関係してくるのではないかと仮定をして、次のような仮説を立て、信頼尺度を用いて検討を行いたい。信頼尺度は、Bristol大学のMatthew J. Riddら5)の開発した”Patient-Doctor Depth-of-Relationship Scale”を使用する。

 

1) 在宅療養を始めるにあたって、当院を選んだキーマンによって信頼度が違う。キーマンはa)本人及び家族、b)医療機関、c)介護事業所などがあげられる。

2) 在宅療養を始めるにあたって、当院で既にかかった事があるか、もしくは現在当院で加療中である。この場合、事前の期待度は高い。

 

 当院及び各訪問看護ステーションは今までも献身的医療を提供してきたが、さらに、一つの共通指針としてアメリカ老年学会が2012年に発表した「Communicating With Older Adults –An Evidence-Based Review of What Really Works-」を活用する事により、より質の高いケアを目指すこととする。

 

 結果として患者及び家族の満足度がどう変化したかを、Cambridge Center for Health Service Researchで開発された「GPAQ-R」6)を2ヶ月後、6ヶ月後に行うこととする。

 

以上

 

References

1) 佃ら (2013). 闘病記にみるがん体験後のポジティブな変化, Japanese Journal of Clinical Psychology, Vol.13 No.6 ;839-848

2) 京田ら (2009). 死を意識する病を抱える患者の死生観に関する研究の動向と課題、 群馬保健紀要30 ; 49-58

3) 山岸 (1998). 信頼の構造, 東京大学出版会

4) 鈴木 (2013) , 「会い方を」を決める , 臨床心理学 78 ; 788-792

5) Ridd M,Lewis G,Peter T,Salisbury C (2011). Patient-Doctor Depth-of-Relationship Scale : Development and Validation. ANNALS OF FAMILY MEDICINE, Vol 9. No.6 538 – 545.

6) Roland et al. BMC Family Practice 2013, 14:160

 

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生活習慣を見直して健康な体になろう

 以前投稿した「改革項目」の中の「生活習慣病治療薬等の処方のあり方」について考えてみたいと思います。厚生労働省の資料には

生活習慣病治療薬の処方は、性・年齢、進行度、副作用のリスク等に応じて、基本的には個々の患者ごとに医師が判断すべきものであるが、例えば、高血圧薬については、我が国では高価なARB系が多く処方されている。

 

と記されています。

 生活習慣病とは、簡単に述べると、食習慣、運動習慣、喫煙、飲酒、休養などの生活の習慣が発症・進行に関与する疾病を言います。一番身近なのは糖尿病や高血圧や脂質異常症などでしょう。これらは生活の習慣を見直すことで治すことができるのですが、一方、薬で治すこともでき、悪いことにこれらの薬の種類が本当に多く、なおかつ、新薬を作りやすいという流れになっています。

 医師は、新しい薬が出ると、患者さんに処方してどの程度効くのか?知りたいと思うのも無理がありません。私たちが新しいスマホが出ると買いたくなる、新しい電化製品が出ると買ってみたくなるのと同じで人間の知りたい欲求にかなっています。しかし、新薬は薬価が高く、医療費を押し上げている要因になっています。

 がんの新薬は土俵が違うので脇に置いておいて、これらの生活習慣病に関連する薬剤は、これまでの様々な臨床研究から実はあまり効果が抜群に良くなったということがないのがほとんどで、昔のやすい薬でも良いのではないのか?また、新薬は帰って今まで認識していなかった副作用が出て使いにくいのはないかと言われることも多々あります。

 見方を変えて、製薬メーカーにしてみればこれらの生活習慣病薬剤は安定的に売れるので、経営の安定化に繋がります。そして、これらの薬剤の利益を新たながんなどの新薬の開発に充てていかなければならないということになります。

 さらに私たち国民から見れば、生活の習慣を見直すことで治るものなら、生活の習慣を変えるほうが自然であると思いますね。本人にとって一番良い選択枝であると言えますね。

先日、スタンフォード大学の河合真先生から貴重なアドバイスを受けました。先生の許可を頂きましたので、紹介させて頂きます。

 

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在宅医療も地域包括ケアも知られていない

 あるサイトに辻彼南雄先生(水道橋東口クリニッック)の談話が載っていました。曰く、「在宅医療のことを知っている患者はほとんどいない」。思わず頷いてしまいました。実は、過日一般の方々に介護保険について講演をいたしました。講演後、アンケートを取ってびっくりしました。介護保険の話を聞きに来られるからには介護についてある程度認識がおありだろうと思ったのですが、下のグラフを見ていただくとわかりますが、すでに介護をしている人もおられるにもかかわらず、地域包括支援センターをご存知の方が、たった25%しかいなかったのです。

 

 言わんや、その向こうの在宅医療について認知度は想像にかたくないでしょう。私が特に強く印象残っているのは、介護に従事する人々が在宅医療(訪問診療)についてよく理解していないということです。介護と医療は別物という感覚です。しかしながら、介護を要する人は、何らかの医療的処置を必要とする人です。ごく稀に認知症の人で全く薬を飲んでいない人がおられますが、大変稀で、ほとんど人は服薬をされています。

 

 現在、「在宅医療・介護連携推進事業」を国が進めていますが、そのうちの「医療・介護関係者の情報共有の支援」はまだ50%も満たない状態です。それほど、医療従事者と介護従事者の連携は難しいのでしょう。

 

ま、それはともかく、地域包括支援センターが一般に認知されていないことを介護従事関係者は危機感を持たないといけないと思います。

 

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関西と関東のつゆの違いは

 寒くなってくると暖かいお蕎麦をいただく機会が増えてきます。いつも関西と関東のつゆの塩分が気になる私は知り合いの管理栄養士Aさんに実際のところどうなのか聞いてみました。関東のつゆは確かに黒くて塩分が多そうだけれど、関西は薄口醤油を使っているのであまり変わらないのではないかと思うと述べられて、実際に関西の友人管理栄養士や資料を調べてくれました。

 結果、やはりあまり変わらないということです。Aさん曰く、「実は関西で使っている醤油は色の薄い『薄口しょうゆ』 、関東では色の濃い 『濃い口しょうゆ』を使っています。 使っている出汁は関西では昆布だし(塩分濃度0.27%)、関東ではかつおだし(塩分濃度0.1%)薄口しょうゆの塩分濃度は16%、濃い口しょうゆの塩分濃度は14.5%です。ということはあまり変わらないということですね。」

 また、そばにいれる具にも注意が必要とのこと。きつねうどんのおあげさんは2枚で塩分1.0g、わかめ0.1gと相当開きがあるそうです。つまりきつねうどんを汁まで全部飲み干すと8.4gと一日の塩分摂取量を超えてしまいます。

 なお、有名はどん兵衛は関東6.6g、関西5.8gと差をつけているそうです。何れにしても温まるからといって、汁を飲み干すことはあまり良くないということです。

 管理栄養士Aさんの書かれた記事はこちらをどうぞ!

 

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遠隔医療は進んできた

 このような記事を読むと、本当に遠隔医療が身近になったと感じます。1998年か99年ごろに北海道大学病院(だったと思う)の看護師の佐藤仁美さんにお会いしたとき、携帯電話で在宅療養している患者さんの褥瘡を医局へ送って医師の指示を仰ぎ処置をしたという話を伺いました。論文で発表もされてます。まだ回線のスピードも大変遅く、画像の大きさも携帯電話で見る大きさだったんで、細かいところは音声で補完してやりとりをしていたそうです。まだ、当時はインターネットを使った試みは始まったばかりでしたので、病院で取り組むほどの大かがりなものではなく、あるものでやっていたという感じがしました。

 同じ時期、大阪では、阪大病院と泉佐野りんくう総合医療センターが専用回線を使って、腹腔鏡手術を阪大から指示を出す試みをしていました。動画をやりとりするにはインターネットではほぼ不可能で専用回線が必要な時代だったんですね。阪大の先生(お名前は失念しました)がその先の展望として、宇宙ステーションでの手術を可能にしたいんだと仰っていたのを覚えています。

 技術的な問題点はこの20年ほどで乗り越えてきたのですから、いよいよ積極的に導入して成果を出すべき時期に来ていると思います。

 

付け加えるとすれば、すでに20年前には、和歌山県立医科大学田辺市などで撮影したレントゲンを回線で大学に転送して、地元医師にアドバイスを行なっていました。ですから、記事を書いた記者は知らないけれども、もうとっくに「本当に」救いになっていたのです。無知とは恥ずかしいことです。

 

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終末期のヘルパーの役割

 以前、行われたケアカンファレンスでは、終末期の患者さん(90歳以上、男性、独居)についてケアマネージャーを司会に、医師、看護師、ヘルパー、ディサービスなどを交えて意見交換を行った。ケアマネージャからこの1ヶ月ほどの現状報告を総括してもらいながら、それぞれの職種から細かな報告をいただいた。この患者さんの場合、いつ旅立たれてもおかしくない状態であるので、これからの介護の方法や、その時を迎えた時の対処の仕方を再確認するという事になり、それぞれの職種から医師へ質問し、医師からアドバイスを受けながら詰めていった。詳細は省略するが、点数稼ぎのケアカンファレンスも多い中、総勢16名参加のカンファレンスは意義のある1時間であった。

 ここで、特に銘記したいのは、ヘルパーの心構えである。今般、ヘルパー募集の求人は多く、それは、要介護者へのいろいろなサービスであり、お世話をするのが好きで人付き合いの良い人はなりたい職種の一つであり、そうして希望する人も多いと思う。インターネットで「ヘルパーの仕事」で検索すると、どのような仕事をするか紹介されているが、それは事業者から依頼を受けたら、利用者の家に自宅から直接行って、指示された内容のサービスを提供し、仕事が終わったら、報告書を書いて、帰るというおおよそそのような説明がされている。

 しかし、そのような元気な状態の介護が永遠と続くわけもなく、最後は看取りの時を迎える。ヘルパーはその最後に遭遇する機会が誰よりもあり、この時に慌てずに対処しなければならないのだが、人の死を目の前にして、滞り無く仕事を全うするには、いわゆる介護サービスという領域からは外れてしまっており、おろおろするということになってしまっている。やおら、事業所へ電話を入れるも、事業所のスタッフが状態を知るすべもなく、こちらもオロオロして医師への連絡が遅れてしまったり、取り急ぎ、救急車を呼んでしまい、病院へ搬送してしまって担当医師への連絡がなくなってしまったりする事もおこる。

 今回も介護サイドからは不安の声があり、ケアカンファレンスでもヘルパーからはその時を迎えたときの、対処の仕方を再確認してもらい、安心して仕事を進めてもらうようにした。かようにヘルパーの仕事は難しい場面もあり、このような場面に遭遇するとはおもや思わず、ヘルパーになろうとする人も多いのではないだろうか。

 

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