来年から始まるスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)
先日投稿した「改革項目」の中の「スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率のあり方」について書いてみます。
昨年の12月に示された平成28年度税制改正の目玉改正に薬局で買った薬も医療費控除にするというものがあります。問題もあることはありますが、医療機関にかからずに薬局で薬を買う行為を持ってセルフメディケーションを根付かせようとするものです。もちろんこれは41兆円を超えた医療費を抑制する効果を狙ったものであることは言うまでもありません。ポジティブに捉えるならば、医療機関へ出かける手間暇を省けるので自分ならそうすると言う人も多いと思います。
具体的には、適用期間は平成29年1月1日から平成33年12月31日まで。対象者は健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組(特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診)をした人です。これらの人が対象となるスイッチOTC医薬品を年間1万2千円を超えて購入した場合、その年分の総所得金額等から控除する、というものです。対象となるOTC医薬品は1,525品目(平成28年10月17日時点)で主だったものに、非ステロイド系消炎鎮痛剤のインドメタシン・イブプロフェン・フェルビナク・ジクロフェナク、ステロイドのプレドニゾロン吉草酸エステル 、抗アレルギーのクロモグリク酸 などです。
ここで疑問が起こってきます。もともとの趣旨は「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」となっています。その上で一定の取組(特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診)ということになりますと、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが生活習慣病が一番多いと思うのですが、アレルギーや胃炎や消炎鎮痛、水虫の薬が健康の維持増進や疾病の予防とどれほど関係があるかというと疑問が起こってきます。(どちらかというと一過性の傾向が強い)本来の趣旨からすると、高血圧の薬や血糖値を下げる薬などが対象薬品として入ってしかるべきだと思います。
まぁ、大人の事情なのでしょう。つまり、OTC医薬品で治せるような一過性の症状はOTC医薬品で治してもらってできるだけ医療機関にかからないでほしい、結果、医療費の抑制になるし、本来医師が診なければならない患者に時間を取ることができる。これが本当に趣旨であると感じます。
なお、
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科学的根拠のない薬は昔からあります
週刊朝日に「最新調査で判明! 科学的根拠の“ない”薬は当たり前に存在した!」という記事が出ました。一般の人には、「そうなんだ!!」と思われるかもしれませんが、この業界では当たり前、というよりも大昔からそうでした。EBM(evidence-based medicine)が注目を集めたのは1998年ごろだと記憶しています。まだ、英語版の書籍しかなく医療関係者はこぞって翻訳本を読んでいたようです。ですので、EBMが日本に紹介されてまだ17年ほどしか経っていません。
それまでの医薬品の開発は、いろいろな作用を試験した結果、効果の高い適用で厚生労働省に申請して医療用医薬品と世に出していました。例えば、ヘルベッサーという薬剤はもともと向精神薬として開発していたのですが、冠血管拡張作用があることがわかり抗狭心症薬として発売になりました。今では、カルシウム拮抗剤として知られていますが、カルシウムイオンがカルシウムチャンネルを通って細胞内に入ると細胞が収縮するという現象はヘルベッサーの後にドイツで発見されました。このようにとりあえずこれこれに効くから薬にしようという開発が多かったと思います。
ヘルベッサーの開発の歴史は「国立研究開発法人 科学技術振興機構」のページを参照してください。
また、それぞれの地方で古くから伝わる「これを煎じて飲むと体調が良くなる」といった民間薬も、そもそもエビデンスがないですし、いわゆる漢方薬もエビデンスがほぼありません。写真は、牛久にあるツムラの研究所で漢方の歴史を学んでいるところです。ツムラさんもエビデンスを増やすために、臨床試験を始めているところです。
ですので、科学的根拠のない薬は怖くて飲みたくないと不安に思う人もいると思いますが、民間薬や漢方薬のように長い歴史の経験上有効であると示されてきた薬剤もあると認識する必要があるでしょう。
高額療養費制度は若者に優しいか?
ここ1週間ほど、厚生労働省を中心に社会保障費の増加を抑制するために、医療・介護の改革案を見直しており、ニュースで流れています、その中でも高額療養費制度に関してです。高額療養費制度とは、ある一定を超えた医療費は戻ってくる制度です。
具体的には、例えば、年収600万円の場合は、「区分イ」に該当し自己負担限度額は167,400円+(総医療費-558,000円)X1%になります。仮に月の医療費が100万円としたら、167,400+(1,000,000-558,000)X1% = 167,400+4,420 =171,820円となります。医療費は一旦医療機関の窓口で3割負担として3割の30万円を支払っているので、30万円-171,820 = 121,180円戻ってくる計算になります。
で、この高額療養費制度に関して、70歳以上の人の負担限度額を増やすということです。このブログを読んでおられる方は高齢者でないと思うので、お金持ちの高齢者に増やしてもらって、将来の自分たちの医療費が崩壊しないようにしてほしいと賛成されると思います。
ただし、政府与党は高齢者の負担を増やすことによる選挙への影響を心配して、また、高齢者の方でも財産を持っている人から困窮している人まで同じ土俵上にあげて、か弱い高齢者に対しての仕打ちであると反対している政治家もいます。決着は年内ギリギリになると思いますが、将来に引きずらないようにしないといけないと思います。
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医療情報は正確性、客観性、最新性が必要です。
すでにニュースなどで広く知られていますが、DeNAが公開していた医療情報サイトWELQが問題になり閉鎖に追い込まれました。社長も責任を取って30%の減収となったようです。
インターネット上の情報は玉石混合で正しい判断をするにはそれなりに予備知識や情報を判断する能力が求められますが、これを一般の人に要求することは困難です。また、何が正しいか?何が間違っている?そのカテゴリーによって異なってくるでしょう。例えば料理サイトですと、美味しいとか美味しくないは多分に個人の好みがありますので判断できかねます。また、宗教のような内容もこれ自体、正しい・正しくないと分けることに無理があるようです。
ところが医療情報は違ってきます。医療情報は、「正確性」「客観性」「最新性」が必要です。つまり「何を根拠に」「誰が」「いつ書いたのか」が正しい判断をする上で重要になってきます。この3点を守って掲載した最初の医療情報サイトは「国立ガンセンター」の患者向け医療情報ページだと認識しています。私がお手伝いしているクリニックのサイトもこの3点を守って掲載しています。
以前、京都大学がノバルティス社の高血圧薬のディオバンの臨床データを捻じ曲げた事件がありましたが、これこそ正確性が担保されていない情報です。この偽情報で医学のプロである医師達も騙されたのですから、私たち素人はよく吟味しなければならないでしょう。
もう一点、先の会社の社長は、監修をつけて再度オープンしたいという発言をされたようですが、「監修」というのは「その内容に責任を持つ」ということをお忘れではないでしょうか?素人が書いた文書を医師などのプロが責任を持つことはありえません。
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在宅医療の看護師
在宅医療で活躍する看護師には、在宅療養支援診療所で医師と行動を供にする看護師と訪問看護ステーションで在宅へ訪問する訪問看護師がいます。
在宅療養支援診療所の看護師は、医師の補助として看護業務を行い、訪問看護師は医師による訪問看護指示書を元に看護業務を行います。
訪問看護師の仕事は、病気や怪我等で在宅で寝たきりの方、医学的管理やリハビリが必要な方、病気や療養生活に不安を抱えている方、あるいはそのご家族のケアとサポートを行うためにご利用者の自宅に直接訪問して、一人ひとりにあった看護を提供することです。 ケアの内容は要介護者によって様々ですが、具体的には、
- 医師の指示に置よる医療処置(インシュリン注射・点滴等の施行・血糖測定ほか)
- 血圧・体温・脈拍などのバイタルチェック
- 医療機器(在宅酸素、人工呼吸器、持続点滴、膀胱カテーテル)
- 褥瘡管理 在宅でのリハビリ(拘縮予防や機能の回復、嚥下機能訓練ほか)
- 認知症ケア(認知紹介後の相談、事故防止のための工夫)
- 低栄養や運動機能低下を防ぐためのアドバイス 療養上のお世話(食事、洗髪、入浴の介助ほか)
- 終末期の看護(ターミナルケア)
など多岐にわたっています。この訪問時に家族から相談を受けることがしばしばあるようで、次の訪問先へ遅れることがしばしばあります。看護師さんも人ですから様々な性格の人がおられますが、今までの経験上さっぱりした性格の人がいいようです。
実は、これ以外にも「コミュニティナース」が日本に芽生えつつあります。この記事を読んだ時、涙が出るほど感動しました。ぜひ、日本に定着してほしいものです。
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セルフネグレクトに関して考える
セルフネグレクト問題が頻繁にニュースで流れるようになってきました。セルフネグレクトは、自己放任と言われ生活に関する能力や意欲が低下している状態です。ニュースなどで問題視されるのは高齢者ですが、実は全世代に関してこのような状態になっていますね。よく、テレビなどで若い人の部屋がゴミだらけでこれをボランティアが片付けるという映像が流れていますが、これもセルフネグレクトだと思います。つまり、老弱男女の区別なく、生活意欲が低下している人が多くなっているのが実情です。
セルフネグレクトに陥っている人には、部屋の中の汚さや匂いということに鈍感になっている傾向があります。鈍感になると、普通の人が汚いとか臭いとか言っても、本人は片付いている、臭わないという感覚になるのでしょう。友人のケアマネージャーが話してくれた実例では、独居の男性高齢者の自宅では、ペットボトルが台所に所狭しと並べられていて、本人はこれで綺麗になっていると錯覚しているそうで、人が見たら異様に見えても、本人はそうは思ってないそうです。
先に老弱男女に関わらずと書きましたが、私が医療機関で見てきた多くの事例から、特に糖尿病が悪化した人はこの傾向が強いようです。糖尿病が悪化すると、インスリンで治療しなければなりませんが、それに加えて食事指導を行います。しかし、この食事指導の内容がすでに理解できなくなっている、つまりまともな判断能力が低下してきてしまっているのです。食べるという基本的な事柄が理解できなくなっているのですから、部屋の掃除やコミュニケーションといった事柄も理解できなくなってくるのでしょう。
特に独居高齢者の場合、直接命に関わってきます。多くの地域で見守りなどでセルフネグレクトを減らそうと努力されていますが、今述べたように、その人がどのような食事をしているか、糖尿病などの病気になっていないかどうか?を見ていく必要があるでしょう。
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ケアマネージャーの仕事
まず、介護のサービスを受けるにあたって、最初に対面する人がケアマネージャーという職種の人です。「マネージャー」という言葉からも分かる通り、介護サービス全般のマネージメントを担います。
- 介護相談 最初に、ご家族などからじっくり現在の状況を聞き、介護のどのような面で困っているのかを聞きます。医師意見書などを参考にどのようなサービスを組み合わせたら良いかを検討します。
- 要介護認定の書類作成 自治体に申請する認定書類は家族でも作成して提出することはできますが、実際は専門的、かつ煩雑で素人にはまず無理です。そのため、ケアマネージャーが執筆代行でして提出するのが一般的です。
- ケアプランの作成 さまざまな事柄を考慮して介護サービスのプランを作成します。ケアマネージャーの中核的な仕事です。訪問看護やリハビリテーション、入浴サービスなど、法人の違う事業所にまたぐので、本来のマネージメント能力が問われる仕事です。言葉を変えれば、ケアマネージャーの資質で、要介護者の療養の質は大きく左右されるわけです。
- その他 他にも、要介護者の状態、サービスの質のモニタリング、主治医との情報交換、介護保険の給付請求など多岐にわたります。
ケアマネージャーは地域包括支援センターや施設や介護支援事業所などにおられます。また、市役所などの福祉窓口などにもおられます。気軽に相談するのがいいでしょう。相談したら契約しなければならないのでは?という心配は不要です。