医療ビジネス

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ヒューマンエラー 使いやすいシステム・アプリへのヒント

最近、同じような事故が2件あって非常に関連性が高いのでそこから何を洞察したら良いのかを考えてみたいと思います。一つは11月26日にコロンビアでブラジルのプロサッカー選手を乗せたチャーター機が墜落した事故です。先日、調査委員会が人為的ミスが重なったと中間報告を発表しました。もう一つは、12月26日に名古屋大学病院で、画像診断の結果に注意がいかず、ごく初期の肺がんを見落とし、3年後に肺がんで患者を死亡させた事故です。大学は情報共有の仕組みを強化していくと述べています。

 

それぞれの詳細は各種記事などを参照してもらうとして、どちらもヒューマンエラーであることは明白です。これらのヒューマンエラーに対する研究は航空機事故の多発以来広く行われてきています。特に、スリーマイル島原子力発電所 の事故以来、航空機と原子力におけるヒューマンエラーの研究が盛んのようです。

 

あまり知られていませんが、東京電力の子会社である(株)TEPCOシステムズが航空機事故を元に原子力発電所のヒューマンエラーをなくす研究をしていました。さらに、医療事故への応用も研究していて、私も何回か当社の研究室へ訪れて色々教えていただきました。東京電力の人とは、東日本大震災以来全く連絡が取れなくなって、半年ほど前に一度電話をいただきましたが、当研究が続いているのかどうかは不明です。

 

さてここからが本題です。以前、Scienceに興味深い研究が掲載されました。(Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes)簡単に説明すると、人間の脳はマルチタスクができない、デュアルタスクが限界であるという研究です。私たちは普段で道を歩いていても、つまずいたり、人と接触したりと、果ては、駅のホームから落ちたりと安全の面でどうも怪しい行動をしてしまいます。よく、注意散漫であるとか、スマホをいじっていたからだろうとか、どうも注意不足で片付けてしまいがちですが、歩くという行為とぶつからないための観察という行為だけでデュアルタスクになってしまい、これに考え事という新たななタスクが入ると、どれかが充分機能しないことになります。歩くという単純な行為でされ、これですから、複雑な作業や複雑な判断は人間の脳には処理できないのは明白です。さらに先の研究では、日頃から複雑な処理をしている人の方が、していない人に比べて、様々な環境的刺激を受けやすく、全般の処理能力が落ちるという結果を出しています。

 

名古屋大学病院の話に戻ります。大学病院の医師は、数百人の患者を診ています。診察時などはその患者のことに集中していますが、それでも看護師や生検や薬剤部などから随時相談・連絡を受けています。一つのことに集中していても、環境はマルチタスキングを要求することになります。「情報共有の仕組みを強化していく」というコメントを発表していますが、逆にマルチタスクを増大させかねません。あえてここは、人間の脳の処理能力に合わせて情報を提供できるかが必要です。

 

システムやアプリケーションを開発する上でもよく考えなければならないということは以上のことでよくわかると思います。画面いっぱいに多くの情報を表示させて、人間の判断を仰ぐのは非常に危険です。いかに人間の脳の処理に合わせたインターフェースを作るかが鍵です。そのようなシステムやアプリケーションは「使いやすい」とことになり、ヒューマンエラーを減少させることができるはずです。

 

Scienceの論文はこちらです。

 

 

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