医療ビジネス

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CTOが新規ビジネスを創出するためには

昨日・今日と行われている日経BP社のIT関連の催しに行ってきました。たまには、このような催しに出て世の中のニーズがどのあたりにあるのかを知るのは私にとってはとても大事ですが、いつも出ていて感じるのは、各社のプレゼンテーションが細かすぎる点が気にかかります。ま、それは後ほど書くとして、今回の催しを総括してみると、

 

1 オンプレミスは大変だから、クラウドをもっと利用しましょう。

2 社内の仕事を便利なツールを使って効率化を図りましょう。

3 セキュリティにお困りの企業様はこのようなツールがあります。

4 その他諸々。

 

これはこれでそれぞれ各社良い提案をされていたと思うのですが、どうも内向きなソリューションを多かったように思います。最初にGoogleのセミナー「Google機械学習テクノロジーで変わるこれからの働き方」を聴講したのですが、結局G Suiteの宣伝になっていて、本来のGoogleAIの未来像を期待していた私としては物足りない内容でした。また、IBMのワトソンに関してもAPIに関するものでワトソンの未来像を見ることができませんでした。各社のブースを見てみても、あくまでも技術的な内容が多く、ターゲットしてIT関連部門の人が対象であることがわかりました。それはそれでIT担当部門の人にとっては刺激のある内容ではなかったと思います。

 

話は変わりますが、あるIT関連企業の社長とランチをした時に、これから企業にITと英語ができる役員(CTO)がいないと相手にされなくなっているということを聞きました。経営者層にITが必須であることは言うまでもありませんが、CTOに求められるスキルは細かい技術的な問題ではなく、新しいテクノロジーから新しい事業を創出することです。CIOが企業内の情報技術部門のofficerだとすると、CTOは全く違ったミッションが求めらることになります。

 

しかし、そのようなCTOはどのように情報を取集しているのか?少なくとも国内のIT関連催しでは事業ヒントを得るには全体像が掴みにくいのではないかなと感じます。で、国外に情報を求める必要に迫られます。そし英語は必須になるわけです。国内でもCTO向けのイベントがあれば企業の活性化に繋がるのではないかと思いました。

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医療機関の情報漏洩

電通の問題で残業をしないようになったけれども、結局パソコンを自宅へ持って帰って仕事をするので、結局、残業は名目上なくなるけれども、仕事は減っていないというなんとも皮肉な話が流れているのはすでにご存じでしょう。

 

先日、埼玉県立循環器・呼吸器病センターの男性医師が患者3600人分の氏名、生年月日、処置内容を保存したUSBカードを自宅で整理するために持ち出して、途中で無くしてしまったというニュースが流れました。日を待たずして、今後は、埼玉県立小児医療センターで40代の女性職員が入院患者40人分のデータが入ったUSBカードを机に置いていて気がついたら無くなっていたというニュースも流れました。

 

他の組織と違って、医療データ漏洩は個人データの漏洩ということでニュースでも大きく取り上げられがちです。おそらく、一般企業でもニュースにならないまでも、パソコンの紛失や、USBの紛失は珍しいことではないのではないかと推測します。では、医療機関に限って見てみるとどんなことがわかるでしょうか?

 

資料はIBMDeveloperWorksというサイトにある「Privacy and security of patient data in the cloud」という記事です。

この記事の中でHHS(米国保健福祉)がEPHIelectronic protected  healthcare informations)として定義した事故のうち、55%と半数以上が窃盗という古典的な手段による手口で盗まれており、一方、ハッキングによるデータ漏洩は6%と低いことが分かります。つまり日本に限らず、およそ世界的に、人間のうっかりミスを防ぐことで半数以上は防ぐことができることがわかりました。

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では、このうっかりミスを防ぐにはどうしたらいいでしょう?簡単で手をつけやすい所を抑えてみると、

 

教育

 やはり、まず職員に対するセキュリティに関する教育が必要でしょう。特に、様々なシチュエーションで起こる事故を具体的に示して、どのような対応を取ればいいかを教える必要があります。特に、スマホが院内のコミュニティやデータにアクセスできるような場合、その危険度を認識してもらう必要があります。

 

アップデート

 院内のPCスマホのアップデートを個人に任せると、必ずやらない人が出てきます。システム部門で強制的にアップデートする仕組みが必要です。

 

アンチウイルスソフト

 最近の詐欺メールは文章を読んでも、偽メールだと気付きにくい文章が多く、うっかり圧縮ファイルを開いてしまうケースが後を絶ちません。アンチウイルスソフトを使うことで未然に防ぐことも可能になっています。

 

その他に様々な対策が先のIBMのページに書かれています。それにしても、ドクターは研究会や論文を書くためには患者のデータが必要なので、外へ持ち出すことが多いです。できれば、DropboxOneDriveなどのクラウドに保存してPC本体には入れないのが最低限必要な防御方法でしょう。

 

中国のグローバリゼーション

 

医療の現場からMRを見る vol.2

 最近は、どのメーカーさんも医師データを活用して重要な医師にピンポイントで面談するようになっています。

それゆえ、どうしても重要なクリニックにはMRが集中する傾向があります。

 

診察終了後、待合室はMRだらけになっています。彼らを観察しているといろいろ分かります。

静かに社名を呼ばれるのを待つのが普通ですが、どうしても時間がかかってしまうので、足を組んでしまう人もでてきます。さらに、ノートパソコンを開けて、なにやら内職をする人も出てきます。待つことも仕事のひとつです。

待っている間でも、面談時のシミュレーションは頭の中でできるはずです。

 

 極端な例かもしれませんが、午前の診療も終わって、私は院長と談笑をしています。

それから、MRを呼びます。1人のMRが部屋に入ってきますが、MRは黙っています。院長が「今日はなに?」と聞くと、講演会のパンフレットを差し出します。

 

最近の傾向か?自分から話を持ちかける能力が不足している人が多いように感じます。

こちらから話しかけると、会話に入っていけるのですが、自分からは話が切り出せないようです。

このMRは、人見知りだと本人も認めていますが、訪問されるMRの半分は、人見知り傾向があるようです。

前回の話に出て来た図々しい人も困りますが、人見知りも困ります。

 

このあたりのコミュニケーション能力を各メーカーはどうされているのか?長い時間待合室で待って、やっと面談できた貴重な時間ですから、もう少し密な会話ができるようになってほしいものです。

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医師とAI

 

医師は、大学病院ならカンファレンス、個人の開業医なら製薬メーカー主催(これが問題になっているんだが、ここは目を瞑って)の勉強会で他の医師と意見交換をしながら疾患に対する多くの医師のアプローチを学ぶことができる。但し、個人病院や開業医はそのような機会がないか、もしくは、出席するのが面倒、などあまり勉強したがらない人が多い。こういう医師は自分だけの知識で患者を診察、薬剤を処方したりする。

特に問題なのは、認知症も含めた精神疾患である。認知症を理解できない医師は相当多く、漫然とアリセプトを処方してしまっており多くの患者が副作用で苦しんでいる。

AIが普及すると、診察室でAIが専門医の意見を集約して、非専門医にアドバイスすることができ、結果的に患者に対してより良い結果をもたらすことができるだろう。

日経メディカルにインタビューを受けるほどの医師であれば、この程度の意見は述べていただかないといけない。編集部ももっと突っ込んだインタビューをすべきである。

 

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ScienceMagazineのローカライズができるまで

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ScienceNatureの違いは最後に書いてますので参照してください。

 

ScienceMagazineローカライズAAASの悲願でした。日本でローカライズをしてくれる組織を探していたのは、今から20年ほど前です。すでに、日本では湯川秀樹博士や朝永振一郎博士、江崎玲於奈博士、福井謙一博士、利根川進博士と多くの科学者の受賞者を排出していましたが、一時期から日本人の論文投稿が少なくなっていたようで、日本人の論文投稿を増やしたいと願っていたようです。まだ、日本では、カール・ケイ氏が個人で日本の事務所を開設していたような状況でした。

 

私は当時田辺製薬に勤めていて、ドクター向けのWebサイトを立ち上げる構想を練っていました。まだその頃は、企業サイトもほとんどなかった時代です。MRに変わる新しい情報提供手段としてインターネットに目をつけていた時、当時の三和銀行の紹介で、(株)大伸社の上平豊久氏が訪問されました。何回かお会いしたとき、AAASScienceMagazineローカライズ先を探しているという話を伺い、これはキラーコンテンツになると直感した私は、上平氏に必ず役員を説得するので他社に話さないでほしいとお願いしました。それから1年、何回となく企画書を作り直して説得した結果、役員会でGoが出ました。

 

Scienceの翻訳は、村瀬澄夫先生(当時 信州大学 医療情報部教授、現在 むらせシニアメンタルくりにっく院長)が統括の元、翻訳会社の(株)アスカコーポレーションが実務を受け、実際の翻訳作業は京都大学大学院のそれぞれの専門の院生がやってくれました。村瀬先生がその週の論文から翻訳候補の論文を2、3本を選び、abstractを翻訳するという流れです。当然、世に出ていない概念や新しい言葉など、大学院生のみなさんの苦労は相当なものだったと思います。論文のタイトルは全て翻訳していたと記憶しています。

 

1998年、田辺製薬Webサイトは、このscienceの目次の日本語化と、毎週2,3の医薬に関連するabstractの訳の掲載を始めました。もちろんのこと、大きな反響をいただきました。今まで英語でしか読めなかった論文のタイトルだけでも目を通すことができるようになったのです。抗菌薬インターネットブックのコラムのところにも書きましたが、科学技術庁の「科学者が見るべき100のホームページ」に「抗菌薬インターネットブック」と並んでこの「Science日本語版」も紹介されました。

 

 実際の翻訳は次のように流れました。AAASから2週間前に日本の(株)アスカコーポレーションに原稿が届き、これを村瀬澄夫教授が見て、abstractを日本語訳する論文を選定します。その後、翻訳を行い、医薬事業本部にて最終チェックを行いました。(株)アスカコーポレーションと医薬事業本部のチェックはメーリングリストを使って行っており、このやり取りは私もウォッチしていました。訳が確定したら、原稿は(株)大伸社へ送られここでHTML化されます。そして、金曜日の午後に(株)大伸社からワークサーバへ上げられ、ここで私の方で、訳が正しく反映されているか?、HTMLは正しいか確認します。その後、アメリカのオリジナルのSciencemag.orgが更新されたのを確認したのち、こちらの日本語版をアップロードします。

 

20世紀から21世紀をまたぐこの時期、遺伝子解析のニュースが毎日のように流れていて、当然、Scienceショウジョウバエの論文が毎週のように載っていた時期です。科学がものすごいスピードで変化していく様をツブサにみることができました。そして、日本人の論文投稿も徐々に増えてきました。圧巻は、イトカワを特集した号です。ほぼ日本人研究者の論文で埋め尽くされました。さらにその後の日本人の科学分野でのノーベル賞も多くなったことはご存知のことと思います。

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私自身は、そのきっかけを作っただけですが、それでも日本の科学に少しだけですが、貢献できたことを誇りに思っています。

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ScienceNatureの違い

NatureScienceはご存知の通り、この2誌に論文が載るとノーベル賞が近づくと言われる権威のある雑誌ですが、この2誌は全くその成り立ちが違います。NatureはイギリスのMacmillan Publishers Limited,が発行している雑誌です。そのため、大きな書店や専門書店に行けば購入することができます。一方、Scienceトーマス・エジソンが興した米国科学振興協会(The American Association for the Advancement of Science(AAAS) (とりぷるえーえす))が発行している会員誌です。そのため、書店では売っておらず、会員になると郵送されてきます。

 

よく間違えられるのは、日経BP社が発行している「日経サイエンス」ですが、全く別物です。当時、日経BP社もAAASScience誌のローカライズを交渉していたそうです。宮田満さんは自社で契約できなかったことが相当残念だった事をこぼしておられました。

 

現在、(株)アスカコーポレーションが事務局をしており引き続き日本版を掲載しています。

 

 

 

医療現場からMRを見る 1

この投稿は、製薬メーカーの方向けのコラムです。

MRというのは、製薬メーカのいわゆる営業マンです。営業マンですが、他の業種と違って、商品の売買には直接関係しません。MRは医療機関へ出向いて医師などに面接して自社の薬剤の情報を届けることを旨としています。

ですので、他の業種の営業とは求められる能力が少し違います。ただ、どの職業でもそうであるように、MRにも優秀な人、並の人、どうでもいい人と分けることができます。そして、訪問されている企業30社あまりのMRのうち、優秀な人は2、3人、並の人は5、6人、それ以外は問題外と私は見ています。あくまでも感覚的に数えているだけですが、若手の医師と話していると、だいだい同じような感想を持っているようです。

 

 今、これを読まれている貴方の会社のMRさんが上位3社に入っているかは、ご想像にお任せしますが、実は、優秀なMRでさえも、かなり緩めに判定しているのが現状で、実のところ、医師の要求に応えられるMRは皆無に近いです。その原因はMRにあるのか?会社の教育にあるのか?営業戦略にあるのか?このあたりを私が経験した具体例を挙げて考えていきましょう。

 

 まず、社会人として成熟していないMRがいるということです。このようなMRはそのまま年数を重ねていくと、単に横柄なMRになっていく傾向があるようです。医師へのディテーリングはソツなくこなすようになっていくのですが、医師以外のスタッフには概して評判が悪いようです。どんなに親しくなっても礼節を弁えることができるかどうかは、大変重要なポイントです。

 

 ひとつ私が目撃した事例をご紹介しましょう。ある医院の玄関は狭く、ひとりの患者さんが通るのにギリギリの幅です。しかもガラスの重たい扉です。健常者が扉を開けて出入りするにはそれほど難しいことはないのですが、高齢者が通り抜けるには、少々時間がかかります。杖をつく高齢者の場合は2、30秒ほどかかります。扉を開ける、もう一度扉を開ける、そして靴を脱ぐ、スリッパを履く、靴を靴棚に入れる、待合室に入る。そのような状況です。このような場合、我々は高齢者の患者さんが無事出入りできた後に出入りするのが通例です。

 

 しかし私が受付から目撃したのは、高齢者の押しのけて入って来たMRです。彼の目的は医師への面談のみで、それ以外は障害物であるようです。この事例は2つの重要なことを教えてくれています。まず、人間として弱い立場の人を守るという基本的な考え方が欠如しているという点、もう一つは製薬メーカーとしての社会的責任(患者を助けるという責任)が欠如しているという点です。

 

 おそらく、導入研修時にこのような基本的な事柄は教えられているはずですが、1人で行動していくうちに、忘れ去られているのではないでしょうか?先ほども申しましたが、後々尾を引いてしまう大変重要なポイントなのです。次回も引き続き事例をご紹介しながら考えていきましょう。

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