医療ビジネス

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医師の「情報不安症」

山崎博史 ネットスタイル

以前、製薬メーカーは情報産業だと言っておりましたが、それはインターネットが一般的に普及する前の話になってしまいました。少し以前までは、医師が情報を得ようとするならば、学会へ出かけるか、学会誌または専門誌に頼らなければなりませんでした。それも、相当製薬メーカーのサポートが必要であったことも事実です。ですのでMRはそれなりに医師それぞれのニーズを掴んで会社が持っている様々な情報をあれやこれやと提供できたわけですし、貢献もできてきたはずです。

さて、現在、疾病、治療に関する情報はインターネット上にほぼ生涯を通しても読みきれない、ましては知識として昇華できないほどの量が存在しています。例えばオプジーボpubmedでは2.627件、Google scholarに至っては23,200件の論文が検索できてしまいます。学会も世界中で催されていますし、日本だけに限っても全ての発表、ポスター発表を医師が網羅することは極めて困難な状態です。しかもがん、自己免疫疾患、認知症と病態が非常に難しく、薬剤も今までの低分子化合物ではなく、薬物治療も非常に気をつけなければならない時代になってきました。

今、医師の立場から見れば一つの疾病、薬剤に関する情報が爆発的に増えてしまって、「自分が見落としている情報があるかもしれない」という脅迫概念に陥っている状態です。今までは、情報を得る手段がなかったので存在さえも分からなかった論文など目の前に現れてしまって、アップアップしているという状態です

本社のマーケティングの人なども、ベンダーが様々なデータを作って持ってくるので、それに振り回されているのと同じです。昔はm3もケアネットもなかったので大掛かりなデータはIMSぐらいでしたね。

このように医師を含め、全ての人々が「情報不安症」という厄介な病気にかかってしまいました。本来なら製薬メーカーの責務としてこの爆発的に増えた情報を個々の医師に対してカスタマイズし提供しなければならないはずですが、今、製薬メーカーができることはDI情報だけになってしまい、本来の情報産業という姿からはほど遠いものになってしまっています。

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