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在宅看取りの満足度評価と医療介護介入の在り方に関する研究

 これは3年ほど前に、私、山崎博史が書いたResearch&Questionsです。しかしながら、あまりにも手間と症例数を必要とするために、最後まで研究が進まなかったものです。おそらく大きな大学病院が関係医療機関と共同で行わないとできない研究だと思います。どなたか参考にしていただいて研究をしていただけばと思いここに記しておきます。(落とし所はいかに普段のかかりつけ医が大事かという点です)

 

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在宅看取りの満足度評価と医療介護介入の在り方に関する研究

当院では、過去2年間の在宅療養患者の医療介入度の比較検討を、がんと非がんに分けて検討を行った。その結果、訪問看護ステーションの介入度に有意差が出た。(p<.001 , Mann–Whitney U test)この結果は、過日行われた第16回日本在宅療養医学会でポスター発表をする機会をいただき、多くの参加者に関心をいただいた。

 

この研究と平行して、訪問看護ステーションに質的なアンケートを実施した(VAS)。その中で、特に自ステーションの自己評価、当院の評価、及び、患者自身の病状受容について比較した結果、患者の病状受容評価が他水準より低いことが確認できた。そこで、検定をおこなった結果、水準間には有意な差が見られた。(p<.001 , Kruskal-Wallis) これらの結果から、量的担保は、訪問看護ステーションとの連携で保証されるが、質的担保が保証されていない事が示唆された。

 

そこで、過去にどのような患者の心理的な研究が行われたかを調査したところ、佃ら1)によるがん闘病記中の心理的変化や、京田ら2)による死生観の研究など、多く確認できた。ところで、山岸3)によると、『「信頼」は、相手が自分を搾取しようとする意図をもっていないという期待の中で、相手の人格や相手が自分に対してもつ感情についての評価にもとづく部分である』と指摘しているように、医療者が初対面の患者のidentityにまで踏み込む事を鑑みると、質的担保を保証することは在宅医療に関わる時の重要な「信頼」要件であり、いかに早い段階で患者と医療者の間で信頼を構築できるかが大きな要因になると考えた。また、鈴木4)は安定した治療関係を築いていくためには治療の認識的枠組みが安全かつ堅固に設えられていることが重要であると述べている。

 

 そこで、我々は「在宅医療を始めるきっかけ」がその後の予後に大きく関係してくるのではないかと仮定をして、次のような仮説を立て、信頼尺度を用いて検討を行いたい。信頼尺度は、Bristol大学のMatthew J. Riddら5)の開発した”Patient-Doctor Depth-of-Relationship Scale”を使用する。

 

1) 在宅療養を始めるにあたって、当院を選んだキーマンによって信頼度が違う。キーマンはa)本人及び家族、b)医療機関、c)介護事業所などがあげられる。

2) 在宅療養を始めるにあたって、当院で既にかかった事があるか、もしくは現在当院で加療中である。この場合、事前の期待度は高い。

 

 当院及び各訪問看護ステーションは今までも献身的医療を提供してきたが、さらに、一つの共通指針としてアメリカ老年学会が2012年に発表した「Communicating With Older Adults –An Evidence-Based Review of What Really Works-」を活用する事により、より質の高いケアを目指すこととする。

 

 結果として患者及び家族の満足度がどう変化したかを、Cambridge Center for Health Service Researchで開発された「GPAQ-R」6)を2ヶ月後、6ヶ月後に行うこととする。

 

以上

 

References

1) 佃ら (2013). 闘病記にみるがん体験後のポジティブな変化, Japanese Journal of Clinical Psychology, Vol.13 No.6 ;839-848

2) 京田ら (2009). 死を意識する病を抱える患者の死生観に関する研究の動向と課題、 群馬保健紀要30 ; 49-58

3) 山岸 (1998). 信頼の構造, 東京大学出版会

4) 鈴木 (2013) , 「会い方を」を決める , 臨床心理学 78 ; 788-792

5) Ridd M,Lewis G,Peter T,Salisbury C (2011). Patient-Doctor Depth-of-Relationship Scale : Development and Validation. ANNALS OF FAMILY MEDICINE, Vol 9. No.6 538 – 545.

6) Roland et al. BMC Family Practice 2013, 14:160

 

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