医療ビジネス

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EBHとは evidence based health

 EBHは目新しい言葉ではありませんが、ここにきて注目を集めています。簡単にいうと、「健康であるための証拠」、言い換えれば、「どのような生活をすれば健康でいられるか」ということになります。以前の投稿でEBMについて触れましたが、EBHが遅れた原因はevidenceを集める手法が確立していなかったことによります。ところがここ数年、個人がiPhoneApple Watchに代表される、生体情報を収集するデバイスが一般化しつつあり、これを使ってデータ収集してevidenceを確立していこうという動きになっています。

 

 このEBHを使って、医療費の削減に取り組んでいる国は意外にも厚生労働省ではなく経済産業省です。経済産業省商務情報政策局に「健康投資ワーキンググループ」というのがあるようです。このワーキンググループでは、特に糖尿病に関して具体的な施策を出しています。下図の通り、従来のターゲットは今まで述べてきた健常者に対して、啓蒙やデバイスの活用を行ってきたようですが、急激な医療費の高騰に対して、すでに糖尿病になっている人に対してこれらの人々の重症化を防ごうとするものです。これらは、今まで、医療機関に頼っていた部分ですが、これに対して経済産業省は、民間の力を使って医療費削減に取り組もうとしています。民間とは健康保険組合やIoTの中心になるIT企業などです。もちろん、すでに医療機関にかかっている人が対象ですから医療者も入ってきます。

 

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 さて、以前の投稿にも書きましたが、医療機関は保険で回収できるものに対しては投資はしますが、それ以外は基本的には消極的です。そのため、国費を使って医療機関にインセンティブを与えなければ協力はなかなか難しいと考えます。できるなら、以前の健常者に対してのアプローチを一般企業はターゲットとした方が事業計画は立てやすいと思います。

 

 ここで、今までのターゲットがうまくいかない原因として私が挙げるとしたら、それは「正常性バイアス(normalcy bias)」ではないかと考えます。多くのサラリーマンは朝から満員電車に揉まれて出勤し激務をこなしています。まだまだ元気だと思うのはごく自然です。健康診断で中性脂肪が増えても、血糖値が上がっていても、少し運動でもするか、とか食べ過ぎには気をつけようとか思うわけですが、まだまだ自分は元気だし、入院するほど悪くなるはずはないと思ってしまいます。実は確実に体は蝕まれているのですが、このような都合の悪い情報には目を背けてしまう、これが正常性バイアスです。

 

 そして、いよいよ糖尿病が悪化して薬を飲まなければならなくなる、インスリンを打たなければならなくなるという段になっては、実は物事を正常に判断する能力が失われつつあります。管理栄養士といつも話していて聞かされるのは、「懇切丁寧に説明しても、よく理解しているように感じない」ということです。

 

 ですので、緊急に医療費を削減するには、すでに医療費を使われている患者さんをターゲットとしてプロジェクトを進める必要がありますが、長い目で見て、医療費を必要とする人を増やさないというプロジェクトも必要です。その上でも、一般企業が取り組むのは健常者に対してです。

 

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