医療ビジネス

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CCRCは高齢者の年金と資産を当てにした非生産ビジネスモデル 〜松江市Rubyとの比較〜

CCRCという言葉を聞いたことはあるでしょうか?Continuing Care Retirement Communityの略で、官邸の日本版CCRC構想有識者会議 では、「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて 地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療 介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」 と定義づけています。また、その意義として、高齢者の希望の実現、地方へのひとの流れの推進、東京圏の高齢化問題への対応の3つの点をあげています。高齢者が実際に地方への移住を希望しているかどうかは、アンケート手法によって相当開きがあることがわかっていますが、要は、高度成長時代に都市部に集中した人たちが今や高齢者となって、医療費や介護など負担増、さらにこれを支える医療従事者、介護従事者の不足を解決するために、地方への移住を促して、需要と供給をバランス化しようというのが狙いであることは明白です。

 

このCCRCを推進するために、内閣府地方創生推進室は「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金」を創設しています。ただし、この交付金CCRCだけのものではなく、ベンチャー支援などいわゆる地域活性の事業に交付しています。CCRCに限れば、260の自治体が既に実施しているか、または計画しているようです。(日本版 CCRC 構想有識者会議委員 松田智生氏 )

 

以下の表は、大和証券株式会社が日本版CCRC構想有識者会議用として出した資料の抜粋です。出所はここです。

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これを見るとわかるように、移住者はCCRCの居住空間を購入するか、賃料を払うことになります。このお金が事業者やREITに回ってくるのが根本的なビジネスモデルです。しかし、よく考えてみたら、CCRCをやろうとする地方自治体にこのような事業者がいるはずもなく、結局は首都圏の事業者やデベロッパーが儲かることになるわけです。さらに、移住者はそれ自体、既にリタイアしているので新たな経済的価値を生むことはありません。結局、彼らが払うべきお金は、購入するにしても賃料を払うにしても、彼らの現在持っている資産及び、これらから給付される年金しかありません。地方自治体にすれば、CCRC施設(ヘルスケア施設、病院、介護施設など)が増えたりしますが、それは、自治体の中での資産の移動だけであって、自治体の外からの資本の流入はないことになります。これでは、自治体として足腰を強くすることはできないのは明白です。あえて、外部流入としてあげるとすれば、地方交付税が増えることくらいでしょう。

 

高度成長期時代を生きたきた世代はお金を持っています。彼らのお金(休眠資産)を経済の流れに乗せること自体は悪いことではないし、有効活用することは良いことでしょう。しかし、高齢者の世代の中で経済が回ること自体に疑問を感じないわけにはいきません。今後、高齢者が増えていくにしても、団塊の世代がいなくなった時に、日本を支える地力はどこにあれば良いのでしょう。50年先、CCRCは必要あるでしょうか?今の高齢者問題に目が行き過ぎるあまり、次の時代への投資がなければどうなるのでしょうか?

 

私は先の投稿でも若い働き手にもっと医療費を回して、働きやすい環境が必要だと書きました。若い世代までが今の高齢者のために働くことはナンセンスであるという考えです。

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さて、副題に「松江市Ruby」をあげた理由がお分かりいただけるのでないでしょうか?知らない人のために簡単にいうと、Rubyとは日本で開発された(まつもとゆきひろ氏が開発した)プログラミング言語であり、国際規格に認証された有名な言語です。まつもとゆきひろ氏が松江市出身ということもあり、松江市Rubyを使った町おこしをしており、多くの若者が松江市に集っています。さらに学校でもRubyを教える授業があり、今後、「Rubyのまち 松江市」として新たな地域ブランドを創生する取組みを行なっています。情報サービス業として取引流入額は2013年には143億円と年々増加傾向にあるようです。(経済産業省の資料による)

 

Ruby一つで大きな効果を生むということではなく、これをテコに情報産業の育成に取り組んでいく、若い人たちが松江市に移住してきてそこで新しいビジネスを起こして、松江市外からの資金を増やしていく、これこそ地方自治体の地力であると言えるでしょう。CCRCが悪いのではなく、CCRCを動かす原資を高齢者の資産に頼っていること自体、日本の創生に直結していないことに憂慮するとともに、これから日本を作っていく人たちにどうやって高齢者の資産を回すことができるか考える必要があるでしょう。

 

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患者調査から何が見えるか? その2 働き手にもっと医療費を

堺屋太一さんは大の女子プロレスファンで、一度誘われて、大阪で女子プロレスの試合を見に行ったことがあります。氏が経済企画庁長官だった時で、いわゆるお忍びの女子プロレス観戦で周りを囲む壁の役割だったんだなぁと今になって懐かしく思い出します。氏はが朝日新聞の4日の夕刊に『2020年代「3度目の日本」創造』というコラムを寄稿されています。氏は「団塊の世代」という言葉を作った本人であり、ちょうど私が書きたいと思ったことと少し重なるところからご紹介します。

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団塊の世代70歳代後半に突入していく。彼らは日本を反映させてきましたが、年金や医療費などの社会保障費を食いつぶし去っていく。問題は、その後。荒涼たる日本が残るのか。それとも新しい楽しみが生まれるのか。

 

若い世代は、自分が何が好きなのかを一人ひとり考え、それを実行してほしいですね。世間から笑われたり、そんなの無駄やと言われてもいい。

 

さて、患者調査からわかることの第2弾です。下のグラフを見ていただければ一目瞭然です。同じ平成26年の厚生労働省の発表資料から年代別の医療費を表しています。65歳以上のリタイア組が約24兆円(全体の60%)を使っています。しかし、34歳までは5兆円、中年世代は12兆円弱と極端に差が出ています。

 

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上のグラフと比較して、次の年代別グラフを見ましょう。同様に厚生労働省が発表した人口動態表から作図しました。平成26101日現在の日本人の人口です(外国人が入っていません)これを見ると、3564歳の人口が65歳以上の人口とほぼ同等であることがわかります。さらに15歳ー64歳のいわゆる就業できる人口は64歳以上を上回ることになります。

 

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65歳以上のリタイア組の医療費は当然あちこち体が悪くなることがあるとしても、あまりにも人口と照らし合わせてみて異常にアンバランスであることがわかります。ここまで見て、若い人たちは、病気にならないから、当然医療費がかからないのは当然で、相対的に65歳以上の医療費が多いのは当然のことであるとの見解もあるでしょう。しかし、本当にそうでしょうか?

 

若者を取り巻く環境は以前と比べて劣悪だと感じます。うつ病統合失調症ADHD、などの精神関連の疾患は蔓延しています。それ以外に、片頭痛喘息アレルギー生理による不快感。これらは働く世代にとって防がなければならない問題です。働く世代が内的環境を良くすることによって、より働きやすくしなければならない、そのために高齢者の医療費の何割かでもこの世代に振り向けなければなりません。

 

高齢者には申し訳ないが、すでにこの年代が生み出した経済効果は食いつぶされています。働く世代が生み出すGDPは彼ら本人に還元されるべきです。特に精神疾患の問題は立ち遅れていると言わざるをえません。

 

患者調査から見えるものは何か?それは、社会保障をすることで日本の経済効果が低くなっている、そう考えると日本を強くするためにより日本を強くする社会保障政策をしなけれならないのではないでしょうか。

 

=>患者調査から何が見えるか? その1 

 

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患者調査から何が見えるか? その1

厚生労働省の平成26年患者調査から「年代別の疾患割合」を出してみました。まずは見てみましょう。

青は14歳まで、赤は15歳から34歳まで、緑は35歳から64歳まで、そして紫は65歳以上です。

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次は、各疾患の実際の患者数を示しています。単位は千人です。一番上の感染症は約19万人ほどです。

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上の2つのグラフを見ると、循環器系と消化器系、筋骨格系がが多いことがわかります。消化器系が多いのは、この区分に「歯」も入っているからです。循環器系は主に高血圧ですが、虚血性心疾患、脳血管疾患など種類が多いのが特徴です。筋骨格系は、骨粗しょう症、関節リウマチなどです。

 

さて、ここで注目したいのは、赤と緑の働き手世代と65才以上のリタイア世代です。(65才以上でも働いている人はいますが、一般的にリタイアとします)一瞥すると、やはり65才位以上の患者数が多いのは、人口が多いことも考慮しても、多くなってしまうことがわかりますが、緑色も意外に目立っています。

 

緑色(35歳から64歳)の多い疾患は、消化器系、循環器系、筋骨格系、精神及び行動の障害などです。これらの疾患が次の世代(65才以上)の疾患に繋がっていきますから、これらの疾患を治すことが、紫色の患者数を抑えることになるわけです。

 

糖尿病に関しては「内分泌」に分類されます。強く疑われる成人男女が約950万人に上ることが、厚生労働省の「2012年国民健康・栄養調査結果」の推計で出ていますが、顕在患者数は意外に少ないです。しかし、かなり悪くならないと自覚症状が出てこない、さらに糖尿病が悪化すると、認知症などに進むので軽視できません。

 

よく言われるように、適切な食事と適度な運動及び、質の高い睡眠が生活習慣病になるのを防ぐと言われています。医療費が41兆円を超える現在において、これらの疾患を防ぐことが大事であると言えるでしょう。

 

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スラム街 IoTの進む中で見逃してはいけない問題

国連2030年には全世界の人口80億人のうち50億人が都市部に住んでいると推計しています。都市化はアフリカを中心に急速に進んでいますが、これに伴ってスラム街が増殖しており、都市部の人口の62%がスラム街に住んでいるそうです。

 

スラム街が増殖しているにもかかわらず、スラム街の健康に関しての研究はあまりないようです。都市全体の健康を研究していて、スラム街だけの健康調査は、進んでいないということです。

 

ご存知のようにスラム街は、衛生状態、水、電気、廃棄物処理など都市部と全く違う特徴を持っています。これらの環境がスラム街の住民の健康に与える影響・メカニズムは「 neighbourhood effects」と呼ばれています。APHRCの研究によると子供の死亡率は非スラム街より高いですが、さらに農村部よりも高いそうです。

 

ランセットの論文では、スラム街と非スラム街との調査を分ける必要があると言っています。

 

THE LANCET

The Health of people who live in slums

 

11の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goal Eleven)では、私たちはスラム街をよく理解していかなければならないとしています。

 

今、私たちを取り巻くHelathcare movementIoTAIなど明るい話題を取り上げがちですが、世界の多くでまだまだ研究が遅れていることを認識しなければならないことを示唆しています。感染症にしても、多くの問題を提示してくると思います。

 

参考ページ

http://www.thelancet.com/series/slum-health

 

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ヒューマンエラー 使いやすいシステム・アプリへのヒント

最近、同じような事故が2件あって非常に関連性が高いのでそこから何を洞察したら良いのかを考えてみたいと思います。一つは11月26日にコロンビアでブラジルのプロサッカー選手を乗せたチャーター機が墜落した事故です。先日、調査委員会が人為的ミスが重なったと中間報告を発表しました。もう一つは、12月26日に名古屋大学病院で、画像診断の結果に注意がいかず、ごく初期の肺がんを見落とし、3年後に肺がんで患者を死亡させた事故です。大学は情報共有の仕組みを強化していくと述べています。

 

それぞれの詳細は各種記事などを参照してもらうとして、どちらもヒューマンエラーであることは明白です。これらのヒューマンエラーに対する研究は航空機事故の多発以来広く行われてきています。特に、スリーマイル島原子力発電所 の事故以来、航空機と原子力におけるヒューマンエラーの研究が盛んのようです。

 

あまり知られていませんが、東京電力の子会社である(株)TEPCOシステムズが航空機事故を元に原子力発電所のヒューマンエラーをなくす研究をしていました。さらに、医療事故への応用も研究していて、私も何回か当社の研究室へ訪れて色々教えていただきました。東京電力の人とは、東日本大震災以来全く連絡が取れなくなって、半年ほど前に一度電話をいただきましたが、当研究が続いているのかどうかは不明です。

 

さてここからが本題です。以前、Scienceに興味深い研究が掲載されました。(Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes)簡単に説明すると、人間の脳はマルチタスクができない、デュアルタスクが限界であるという研究です。私たちは普段で道を歩いていても、つまずいたり、人と接触したりと、果ては、駅のホームから落ちたりと安全の面でどうも怪しい行動をしてしまいます。よく、注意散漫であるとか、スマホをいじっていたからだろうとか、どうも注意不足で片付けてしまいがちですが、歩くという行為とぶつからないための観察という行為だけでデュアルタスクになってしまい、これに考え事という新たななタスクが入ると、どれかが充分機能しないことになります。歩くという単純な行為でされ、これですから、複雑な作業や複雑な判断は人間の脳には処理できないのは明白です。さらに先の研究では、日頃から複雑な処理をしている人の方が、していない人に比べて、様々な環境的刺激を受けやすく、全般の処理能力が落ちるという結果を出しています。

 

名古屋大学病院の話に戻ります。大学病院の医師は、数百人の患者を診ています。診察時などはその患者のことに集中していますが、それでも看護師や生検や薬剤部などから随時相談・連絡を受けています。一つのことに集中していても、環境はマルチタスキングを要求することになります。「情報共有の仕組みを強化していく」というコメントを発表していますが、逆にマルチタスクを増大させかねません。あえてここは、人間の脳の処理能力に合わせて情報を提供できるかが必要です。

 

システムやアプリケーションを開発する上でもよく考えなければならないということは以上のことでよくわかると思います。画面いっぱいに多くの情報を表示させて、人間の判断を仰ぐのは非常に危険です。いかに人間の脳の処理に合わせたインターフェースを作るかが鍵です。そのようなシステムやアプリケーションは「使いやすい」とことになり、ヒューマンエラーを減少させることができるはずです。

 

Scienceの論文はこちらです。

 

 

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マクロチーム医療 製薬メーカーのマーケティングの未来

以前、日本製薬工業会(医薬産業政策研究所)から講演を頼まれチーム医療を絡ませながら製薬メーカーのマーケティングについてお話ししました。それはそうとして、私のようなものでいいのですか?と聞いたくらいにそぐわない、翌月は日経BP社の宮田満さんだったので比較できないし、困惑したのですが、まぁ前座ということで承諾した次第です。

あれからチーム医療は一般的なものになっていき、今更語る人も少なくなってきています。IoTの利用もこれを加速させるものになっています。ただし、当時憂いていた製薬メーカーだけは、そのチームから取り残されたままになっていると感じます。特に、在宅医療の分野は、製薬メーカーにとってカオスの状態にしか見えていません。

病院やクリニックでは、医師、看護師、栄養士、薬剤師などと面談することによって、必要とされているニーズを組み上げて薬剤の立ち位置を再確認する作業ができました。しかしながら、在宅医療では、施設の看護師、訪問看護師など医療スタッフや、実際に薬を飲むときに手伝う介護士などがケアカンファレンスで患者さんのニーズを再確認していく新しい局面のチーム医療には入っていけないのが現状です。

製薬メーカーからの視点で見ると、在宅医療はジェネリック医薬品ばかり使うので、コストパフォーマンスが悪いと見えます。今まで通り、病院、クリニック外来を重点的にプロモーションをしていくべきだとの考え方に落ち着きます。そのためにも高度な医薬品を開発すべく、創薬ベンチャーを買収してコストパフォーマスを上げなければなりません。

ただ、私の考え方は、現在の病院・クリニックの医療現場と在宅医療は、チーム医療というフレームワークで同じ土俵上のものになっていくと予想しています。それはBlockchainのような新しい技術が、より患者を主体にしたものとして生まれてくると予感しています。製薬メーカーは今も、もちろん大事ですが、より広い視野と深い洞察力で、現在開発をしている新薬が世にでる頃の新しいチーム医療(マクロチーム医療とでも言っておきましょう)にどう対応するか考えるべきでしょう。

 

最後に日本製薬工業会で話したサマリーを記しておきます。少し時代が古いのであくまでも参考程度にお読みください。

製薬産業は戦後、国民皆保険、薬価制度という“社会主義経済” のゆりかごの中でぬくぬくと成長してきました。このような状況の中で、患者は消費を注ぎ込まれる“焼却炉”でしかあり得ず、そのためには、手段を選ばない開発、製造、販売、処方が繰り返されてきた事は承知のことです。しかしここへ来て、薬害訴訟、医療費高騰、健保崩壊、と弊害が続々と出てきています。戦後の医療制度は産業界にとっては大変有益な仕組みでありましたが、今は、消費者にとって如何に有益であるかが最優先課題になってきています。もちろんこれは、医療に限らず、土木などに見られる公共事業も同様に見直されてきています。
 では、医療は変化しているのか?医療過誤インフォームドコンセントを背景に医療現場は歩みは遅くとも舵を取り直しているように見受けられますが、こと製薬産業はどうかと見てみると、医療従事者の顔色を見ながらも、基本的な方針は変わっていなのが現状ではないでしょうか?なぜか!それはマーケティングの欠如であると断言できます。今までマーケティングという概念など必要なく、箸にも棒にもかからない薬剤を作っても薬価さえ高価につきさえすれば、売れた時代が長く続いていたのです。そのような経験をした人たちが今、企業の舵取りをしていることに大いに起因しています。

過去の成功体験を大事にするのは、この業界だけではないですが、今、医療の現場(医療従事者、患者)とマーケティングコミュニケーションを行わないと、遅かれ市場から退場しなければならないでしょう。

今回の論理の展開はこうです。 そもそも製薬産業にマーケティングが存在していたのか?なぜ存在しなかったのか?一部分存在していたしたらそれはどこに存在していたのか?なぜ全体として存在できないのか?を追っていきます。この中で、営業現場と、本社組織との乖離が浮き上がってきます。その乖離を埋めようとして本社サイドは、非論理的はプロモーション施策を打ち出し、結果として非効率なプロモーションが生まれてきます。今、現状はどうなっているのか?表面上は非常に良い仕組みが出来つつあるように見受けられるが、それは正解なのか?

その解答を見つけるために、今一度“医療現場”を見てみる必要があるでしょう。その原点として、なぜ薬は必要なのか?を医療という行為から見てみる必要があるでしょう。戦後から振り返ってみると、そこには購買動機の変化が見受けられます。その変化の源泉はなにかを見ていくと、患者が消費者としてマーケットにやっと参入してくる事ができ、結果、医療行為という本質が変化していることに気が付くはずです。このような中で第一消費者としての医療機関の薬剤に関する受け止め方も変化してきているのです。それはなにか?

まさにここに次のマーケティングのあり方が隠されています。購買という行為は医療の世界に限らず、新たな局面を迎えてきてます。早晩、我々の世界も踏み込まなければならない時が来ており、そのために、市場と対話する必要があり、そこから企業としてプロモーションも変化していく必要があります。

我々はまず、この業界でいったいぜんたいマーケティングは存在していたのかどうか検証してみる必要があります。“社会主義経済”の“計画経済”は生産計画があって売上げ計画を立てて、それをはき出すという言ってみればそういう仕組みですが、(だと認識してますが)、これまでの医薬品産業はまさにそうであったと言わざるを得ないでしょう。これに医療従事者が薬価差という医療機関の屋台骨を潤すために、我々の消費に協力を惜しむことなく処方してくれていたという図式が見えます。実際、患者は治療してもらうという弱者であり、この仕組みの掃きだめになっていたことは言い方は悪いですが、外れてはいないでしょう。そういうアプローチから見ると、製薬産業、医療機関ともども、“儲かる”という同じ価値観で進んできたのですから、マーケティングの必要性もなかったと言っても過言ではないでしょう。

しかしながら実際は、個々の医療機関ごと、医療従事者ごとにウォンツは違っており、それを知り得たのは現場のプロパーでした。プロパーの時代は、薬価差はともかく、ゴルフのお供ができるか?酒の相手ができるか?という点も重要なウォンツであったはずです。そういう意味では現代風に言えば、one to one の仕組みがすでに存在していたはずです。ところが、優秀な営業マンが本社機構に転勤になった途端、全体としてのウォンツが見えなくなります。当たり前の事で、現場で一切仕切っていたからに他なりませんし、トータルのウォンツを見る必要もないわけです。が、やはり職務として何かをせねば!とやおらSFAやらを始めたわけです。これが大いに現場と本社との不信感を芽生えさせていきます

では、薬剤に関する情報はアクセスできているのか?これが問題です。 今、医療従事者向けのwebサイトや患者向けのサイトや、コールセンターなど全体としての仕組みは出来つつあるようです。しかし、これが本当に正解かどうか、今一度、“医療現場”とはなにか?を見てみる必要があります。

そもそも“治療”するという行為はなにか?です。人は誰でも一生、健康でありたいと思うのは当然であり、不幸にも病にかかったとしても如何に回復させるか?回復が困難ならどのような生活をしていけば良いかを必死になって考える訳です。今までは、お医者さんにかかって言われるようにしていた訳ですが、現在では自分で情報を集めて、より良い選択枝を選ぶようになってきています。

当然ながら、医療機関側も薬価差に頼らず、また医療過誤などを起こさず、患者にとってより良い医療サービスを提供していかなければならなくなってきました。この変化の源はいろいろあるでしょうが、本質的には“情報の非対称性”がなくなってきたことにあります。書籍あり、テレビあり、そしてインターネットです。もちろんトリガーとしては、薬害問題に端を発していると考えられます。そして医療機関は“儲ける”ためではなく“治療する”ために様々な情報を集める訳です。端的に言えば、治療は”高度に情報が集められた結果“として認識されるわけです。

レビットの言うところの「1/4インチドリルが売れたのは、人々が1/4インチドリルを欲したのではなく、1/4インチの穴が欲しかったからだ」というマーケティングの本質に近づいた訳です。つまり、薬剤が欲しいのではなく、治療がしたいからだという当たり前の行為に変わりつつあるという事です。

では、医療現場は情報を取ることはできるのか?否です。社会は、より細分化されたライフスタイルが定着してきて、そのためにそれを補うための製品、サービスも多様化してきています。さらに、一生に間にもさまざまなライフスタイルの変化を求めるようになり、私たちは、所有する無駄を廃するようになってきています。これは個人生活に限ったことではなく、企業もアウトソーシングやリースに見られるように自己所有から脱却しつつあります。私たちは物事を決定する場合、様々なソースから情報を入手し、一番、自分にとって都合の良い方法を選択できるようになりました。音楽はCDさえも買わずにダウンロードする、家も購入するのではなく賃貸で済ます。この背景には、必要なものは必要なときに好きな所からチョイスし、必要なくなれば手放せるというネットワークが発達したからに他なりません。

当然、医療という行為もネットワーク上で必要な情報を収集し治療を行い、必要なくなったらログアウトするという姿に変わっていくと考えられます。そうなると我々医薬品産業は、まず情報を売るというスタイルに極端ですが、そうなると考えても良く、結果として“物としての薬剤”が供給される図式が当たり前になってくるかもしれません。そういう意味では、医療現場が欲している情報に、医療現場がいつでもアクセスできる環境を整える必要があるでしょう。当然、プロモーションも「治療のためのこういう情報を提供できます」というスタイルに変わってくる可能性があります。そのためにも、今、医療現場治療の為にどのような情報を欲しているのか、知る必要があり、そのためにマーケティングコミュニケーションが急務です。

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医師のフラットなネットワーク

ある大学医学部の医局が医局員に、バイトを辞めるか?医局をやめるか?を迫っています。医局は今や崩壊の危機に立っています。教授という役職の権力はほぼなくなりつつあり、各大学はいかに学生たちに人気のある医師を教授に迎えるかに苦心しています。

 

先のバイトを辞めるか?医局にやめるか?という方針もいわば危険が賭けと言わざると得ません。仮にバイトをしている医師が医局に戻ると、クリニックは医局になびくことになります。そのことによって医局はそのクリニックを配下に収めることができ、臨床研究においてもクリニックに依頼しやすくなります。しかし、これは医局側の誤ったロジックです。

 

クリニック側にすれば、すでにフラットなネットワークができています。これもSNSの発達が大きな要因になっているでしょうし、研修医制度において他大学の医師との交流も増えています。仮にバイトしている医師が医局に戻ったとしても、ネットワークを使って別の医師を探すことは難しいことではなくなっています。

 

昔、初対面同士の医師は、出身大学、卒年、指導教授を自己紹介することで、そこに2人の上下関係を確認しあうというなんとも一般の人にとっては滑稽なことがまかり通っていましたが、今や、出身大学などで上下関係を云々するようなことはほぼなくなったのではないかと思います。もちろん、年齢や貢献度など一般でも当然なマナーもありますし、それ以上に年齢に関係なく、お互いの仕事に対してリスペクトしています。

 

さらに言えば、自分自身がどれだけ魅力のある人間かが重要であり、そうでなければ自らのネットワークは広げられないことになります。

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